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ファシリテーション:協働をデザインする

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先日、スイスのブライト・グリーン・アカデミー社ジリアン・マーティン・ミアーズ氏を招聘して特別セミナー「ファシリテーションの基盤」を開催しました。ジリアンは25年以上にわたり世界70カ国でファシリテーションを実施し、国際ファシリテーター協会からゴールド賞を受賞した実力者です。今年は、昨年実施したプログラムをさらに練り上げての提供となりました。副タイトルとして「協働デザイン」と名付けましたが、それぞれ知性と感性をもつ多様な人たちによる集団が、目的達成のための効果的な行動し、そしてより確実にその成果を得るために、私たちはいかに協働のための場とプロセスをデザインできるか、を主題にしたワークショップでした。

私もジリアンと一緒にプログラム設計とデリバリーに参画させてもらい、とても多くの気づきと学びをえました。学習する組織におけるチーム学習(共創的・内省的対話など)やシステム思考の「構造が挙動パターンに影響する」などの原則を心得てるつもりでしたが、今回国際的なプロのファシリテーターの仕事を目の当たりにすることで、設計の繊細さ、優雅なデリバリー(実施)、機敏な介入の様子を見るにつけ、自分自身の是非実践に取り入れたいと思いました。今回のメルマガでは、このセミナーの主要な学習ポイントを紹介します。

ファシリテーションの基盤を築く

ワークショップの冒頭は、タイトルにもなっているファシリテーションの基盤についてのモジュールです。導入として、それぞれの自分自身の特性について考えました。ファシリテーターはどのようなタイプの方でも自分の強みを認識し、個性を活かしたファシリテーションが可能だとジリアンは考えます。強みを認識し、どのように活かすかを振り返った後、それぞれの「ラーニング・エッジ」について探求しました。エッジとは、時として苦手のニュアンスを持ちますが、平たく言えば自分自身が普段の思考や行動の範囲の境界のことです。例えば人によって「ファシリテーションの際にファシリテーターが話し過ぎる/話をしなさ過ぎる」とか、「グループダイナミクスに目が行き過ぎて成果物が不十分になる/成果物に目が行き過ぎてグループダイナミクスへの配慮がおろそかになる」などです。人によって適切なゾーンのエッジ(境界)を外れる軸や方向はさまざまです。

ジリアンは、スイスのダボスで毎年開催されている世界経済フォーラムの運営タッフ150人に対してファシリテーション・トレーニングを実施しました。その際に、ファシリテーターがしばしば経験する10組の典型的なラーニング・エッジを見出しました。それぞれのエッジについて、さまざまな改善の戦略や工夫のヒントが蓄積されており、またそれぞれの人にさらなる工夫について探求を呼びかけます。

また、どのようなタイプのファシリテーターであれ、共通で心がけるとよい6つのコンピテンシー(行動特性)が紹介されました。

  • クライアントとの協働する関係を築く
  • 適切なグループプロセスを計画する
  • 参加型の環境をつくり、維持する
  • グループを適切で有用なアウトカム(結果)へと導く
  • 専門知識を築き、維持する
  • ポジティブでプロフェッショナルな姿勢の規範を示す

(国際ファシリテーター協会「ファリシテーターのコンピテンシー」)

そして、ファシリテーションのプロセスは、会議、ワークショップ、リトリートなどのイベントだけにとどまるものではありません。イベントの準備段階がファシリテーションの成功に大いに影響を与えます。一にも二にも準備が重要であり、ジリアンはデリバリー(実施)で使う時間の3倍程度を使うこともよくあると言います。

アウトカムを明確に言語化する

クライアントとのさまざまなエンゲージメントを通じて行われる準備段階でも、とりわけて重要なのが、ファシリテーションを通じて導き出す知的なアウトカム(結果)を明確化することです。

アウトカムには「ハード」と「ソフト」があります。ハードなアウトカムとは、グループのタスクに関わる結果であり、例えば、意思決定、ビジョン・ステートメント、戦略アクションプラン、合意などで、しばしばアウトプット(成果物)を伴います。一方、ソフトなアウトカムとは、例えば、メンバー間の関係性の改善、各メンバーのコミットメントや覚悟、前進のための情熱やエネルギーなど、グループあるいは個人の内面の変化に関わる結果です。ソフトなアウトカムがえれないと会話の量や質は下がり、また、戦略などの実施・達成度合いに負の影響を与えます。

これらの異なるタイプのアウトカムについて、クライアントの窓口やスポンサーの人たちがバランスよく認識していないこともしばしばあります。エンゲージメントを通じて、さまざまなアウトカムを明確に言語化し、優先順位をつけることはファシリテーションのデザインやその成功を測る重要なステップとなります。

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タスクとグループダイナミクス面の双方に注意を払う

どのようなアウトカムを得るかを基本の骨格としたら、次にどのような活動を、どの順序、どれくらいの時間配分で行うかなど、ファシリテーションの肉付けのデザインを行います。ここで、ファシリテーターのラーニング・エッジに関わる2つの傾向が見られることがあります。すなわち話し合いの中身、進捗、成果物などタスク面に集中してグループ・ダイナミクスをおろそかにする傾向と、逆にグループのダイナミクスを主体性やエネルギーに満ちたものにすることへ注力するためにタスク面の進捗を見失ってしまう傾向です。

私の経験では、一般的に、ファシリテーションを知らないマネジャーや会議のモデレーションを行う人はタスク面を重視するほうへ傾き、一方組織開発や対話などを行うファシリテーターは、グループ・ダイナミクスをメンテナンスするほうへ寄っていると感じることがままあります。

ジリアンが提唱するのは、構造化し、論理的でハードなアウトカムを導きだしながら、同時に、柔軟で、フローと創発の余地のあるプロセスとアジェンダをデザインする技能を習得することです。タスク面とグループダイナミクス面の双方が紡ぎ合うプロセスは、まるで音楽のように協働の調べを奏でてくれることを実感しました。

協働プロセスのアウトプットを収穫する

そして、協働プロセスのアウトプットは、ハード・アウトカムへの直接的な貢献だけでなく、ソフト・アウトカムにも影響する重要な役割を果たします。あなたの組織では、ミーティングのアウトプットを、ジュニア・メンバーが議事録として記録するだけにとどまっていないでしょうか?

有効なアウトカムを導き出すためには、「なぜ、誰が、何を、いつ、どこで、どうやって」収穫するかを検討することもファシリテーションの重要なデザイン・ポイントの一つです。ジリアンは、「クラウドソーシング(多数のメンバーからのインプットの収集方法)」や「スペクトラム(任意の変数軸上に自分の評価をシールや立つ位置で示す方法)」などの基本手法のほか、実に多様な手法やツールの数々を紹介してくれました。クリエイティビティをそそるアナログなデザインもよいですし、また、大規模会議などではオンラインの収穫ツールなども近年ずいぶんと使い勝手がよくなってきています。

協働をデザインする

2日間のワークショップは、学んだフレームワーク、ツール、手法を駆使した、参加者自身によるファシリテーションで締めくくられました。タスク寄りの人からグループダイナミクス寄りの人まで多様なメンバーで構成されるチームが短い準備時間ながら、チームで協力をして見事なファシリテーションを披露してくれました。それぞれの個性を活かした、多様でクリエイティブなファシリテーションの時間と空間を有意義に過ごしました。

ファシリテーションによる協働は、けしてファシリテーターが話すことのみで起こすものではありません。ファシリテーターがクライアントらと共にしっかり準備をして、アジェンダ(進行次第)、活動、空間、備品・資材、ビジュアル、問い、話し合い方のルールや自由、問い、そして実施の際の参加者とのやりとり、柔軟さや適時・適度の介入、そしてファシリテーターのあり方や態度などさまざまな要素の相互作用をデザインすることで集団による協働を起こしやすくなることでしょう。

ジリアンは、ファシリテーションの実践は、リーダーシップの実践にほかならない、と言います。それは単に「サーバント・リーダーシップ」という意味合いだけでなく、職場や近所や家族の中で、それぞれの人の個性・存在を尊重し、潜在的な知性や感性を引き出すことを支援し、そして集団で知的な成果、価値を生み出していくという意味で、あらゆる人にとって役立ち、また求められるものだと考えています。

私たちは日本でファシリテーションの技術やフレームワークについて、学校教育や職業訓練で十分に身につける機会は十分にはなかったかもしれません。今回、世界の第一線で活躍するジリアンは、単にその知識やスキルを伝えるのではなく、そのポジティブでプロフェッショナルな姿勢・あり方を通じて、私たちに多大なる知恵と勇気を与えてくれたのではないかと感じています。

そして、私は、日本人こそ、ファシリテーションの技術を学ぶことで世界で活躍、貢献ができるとも思います。今日、世界のさまざまな対立や問題の解消に向けて多くの人々が日々苦労しながら前進に向けて努力している中、日本人らしさのあるファシリテーションが、多様な人々の協働を支援できたら素晴らしいことでしょう。このワークショップに参加した皆様と、あらためてファシリテーションの真価を国内外で広げていけたら幸いに思います。

(執筆:小田理一郎)

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